たかが本、されど本

本と本屋にまつわるエトセトラ。地方出版社勤務。ひそかに書店開業をめざし、こそこそ詮索中。

本は本屋で買うのが正しい

 本は好きですか?

 本を読みますか?

 本屋に行きますか?

 本屋は好きですか?

 いきなりの質問攻め、恐縮。

 以前の私なら「本屋は好き、本は好きではない」と回答しただろう。今の私は「本屋も本も好き」だと言える。今も昔も場所としての「本屋」は、私にとって何物にも代え難い。なぜか?理由は以下である。

 1.何時間いても書店員から文句は言われない。※基本的には

 2.立ち読みし放題。

 3.何度、入退店を繰り返しても大丈夫。

 4.家族や友人などと行って、別行動してもおかしくない。

 5.書店員から声をかけられることは、まずない。

 まとめると「気軽に行け、時間がつぶせ、一人の時間も確保できる」ということ。他にこんな小売店は思いつかない。  

 では、なぜ「本も好き」に変わってしまったのかというと「本を読む習慣が身についた」から。これは、仕事柄と言ってしまえば身も蓋もないが。ゲラも読むし、仕事に必要な本も読む。これらが習慣化すると、自然と個人的に興味がある本も読むようになる。

 すると、さらに「本屋が愛おしくなる」のだ。大型書店、ロードサイドの書店、小書店、古本屋(ブックオフ含む)、古書店など、どこでもいい。本棚がある空間、場所に行き、新刊本から放たれるインクのにおいや古本が醸し出す、時を経たからこそ鼻を突くにおいがあれば、それでOK。何かしらの本を買い、自宅には積ん読の山がいくつもできあがる。結果的に本を読むことになる。 

 つまり、私が体験した「本と本屋をめぐる、一連の流れ」は、本を探し、本に触れ、ページをめくり、試し読みができる本屋が起点である。いつでも気軽に誰でも行けるリアル書店だからこそ。ネット書店ではありえない、できないことだ。しかし、本屋の数は1999(平成3)年以降、減少の一途たどっている。1999年は約22,000店、2015(平成27)年は約13,000店にまで落ち込んでおり、大規模なショッピングモールやテナントビル、商業施設に出店する全国チェーンの大型書店やリージョナル・チェーンの書店以外に、新規開業する本屋は皆無だ。いわゆる駅前や商店街など、「街の本屋」がなくなってきている。(参照)

 数が多ければ良いという問題ではないが、本屋がない自治体が全国的に増えている。本屋がなくなると、その街の住民は「本を買い、読む習慣がなくなる」のだ。本が、本屋が好きな人が減ることにつながる。週刊誌や漫画雑誌など、交通機関や車を使ってまで他の地域の本屋まで行かないだろう。この習慣がなくなることは、出版社や書店にとっては致命的。必死に本を作り、売っても、その努力が水の泡となる。

 だから、本(出版)と本屋は一心同体。特に、本との出合いを生み出す本屋は重要な場だと言える。本屋を守ること=本屋で本を買うこと。これにつきる。